'88 lifeworks

ギリギリ昭和生まれサラリーマンの日記

将来有望な甥っ子のハナシ

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僕には5つ離れた兄がいる。これまで一緒に学校に通ったのは僕が小学1年生の時で、兄は6年生だった1年間しかない。僕が中学生の頃は兄は大学生で、僕が高校生を卒業する頃には兄はもう働いていた。だからか、僕にとって兄は常にワンステージ上に立つ存在だった。

兄が弾丸が装飾されたストラップを肩にかけギターを弾き、バンド活動という青春を謳歌しているころ、僕は楽器に興味を持ち始めていたし、おそらくではあるが兄が童貞を卒業したであろうころ、僕は兄の部屋からエロ本を勝手に拝借していたりした。

今思えば、僕は兄を追っていたのかもしれない。

そんな兄がやけにまじめに付き合っている女の子を家族に紹介する場があった。僕が高校1年生の時であった。

家族総出でちょっと高めの飲食店に行き、食事をする会だった。初めて見る兄の彼女に対して大した感慨を抱かなかったのだが、食事を残すのが気に食わなかった。今思えば、緊張していたから食事がのどを通らなかったのかもしれないが、当時の僕にはそんな配慮はなく、「それ、残すんなら食べていいっすか?」と言って余り物を食べた。後から親に「他人の食事に手を付けるものではない」と怒られたのを覚えているが、僕は良くも悪くも兄の彼女のことを他人とは思っていなかった。

しばらくして、兄の彼女は第1子を孕み、僕が一生辿りつけないであろう結婚というステージに兄は上がった。オメデタ婚というやつである。

それから兄夫婦の快進撃は見事なものである。翌々年に第2子を、さらに翌々年には第3子を生んだ。第3子の時は「女の子がほしい」という思惑で頑張ったようだが、結果的に男3兄弟というむさ苦しい所帯を持つことになった。

今現在、長男は6歳、次男は4歳、三男は2歳というだんご三兄弟なのだが、こいつらがまた狂おしいほどに可愛い。正直なところ、だんごたちと365日共同生活をしている兄夫婦には同情しなくもないが、そんなことはおじさんには関係ない。1年に数日しか会えないのだから、その間だけ都合よく、こっちがクタクタになるまで可愛がってやる。

数年前までは言葉も話せない、力の加減を間違えたら壊れちゃいそうな存在だった甥っ子が立派なやんちゃ坊主になっていた(三男はまだそんな感じだが)。大流行している妖怪ウォッチの妖怪たちの名前を散々と聞かされ、アナ雪を4回も見て、雪が降る元旦に歩いて初詣に出かけた。

ふと、彼らには僕と言う存在はどういう風に映るのだろうか、と思った。お父さんじゃないけどお父さんに似ている人、自分に流れる血と同じ血が流れている人、伯父という言葉での表現ではなく、同族感とかそういうスピリチュアルなものを感じとってくれているのだろうかと考えていた。

甥っ子たちは数年、たまに会う僕という存在が一体何者なのか探っているようだった。だからしばらくの間、僕は名無しだった。「おじさん」と言われることもないし、ましてや名前で呼ばれることもなかった。1度だけ、長男が間違えて僕のことを「お父さん」と呼んで恥ずかしがっていた時は、血のつながりというのを甥っ子も感じてくれているんだろうと思い、嬉しかった。

今年の正月は僕にとって思い出深いものとなった。これまでよくわからない存在だった僕をはっきりと認識してくれるようになったのだ。具体的にいうと、名をもらったのだ。それもいくつも。

ソファーでじゃれあっていると咄嗟に、次男が僕のことを「ボス妖怪ネコ」と呼んだのだ。どういうこっちゃこいつ!と思って脇をくすぐったが、たぶん妖怪ウォッチ講談が終わった後で頭にジバニャンが残っていたのだろうと推測できた。子どもというのは実に安直であるが、甥っ子たちの中でハマったようで、数日間僕は「ボス妖怪ネコ」だった。甥っ子たちが僕を「ボス妖怪ネコ」と呼ぶ時は決まって、「さぁ、遊んでくれ!」と宣戦布告しているようなものだったので、僕は応と言い最大限にかまってやった。

ある日の夜は部屋着の黒いジャージを上下に着たからか、次男が僕を「黒オッサン」と呼んだ。またしても長男と2人して「黒オッサン」と連呼するので宙づりの刑に処してやった。三男は訳も分からずキャッキャッとはしゃいでいた。

勝手な解釈だが、甥っ子たちが僕に名を与えたということは、少なからず同族とか仲間とか、家族とかそういう気持ちを持ってくれたのだろうと思って、少し泣けた。そんな感慨に浸りながら、何度目かのアナ雪を家族と見ながら少し落ち着いた時間を過ごしていると、またしても次男が僕に言った。唐突に。

「お姫様にしてやろうか?」

えっ、何、急に、同い年かちょっと上くらいの女の子だったら、ワッてなってるぞ、と思った。しかし、何故4歳児がアラサーのオッサンに対してそんなことを言うのか不可解だった。普通に考えたら、自分のお母さんか、僕の姉妹にでも言えばいいのに。少なくとも、性別を間違えている。

次男はそれを言って、別に恥ずかしそうにしているわけでもなく黙ってアナ雪の続きを見ていた。僕は少しドキドキしていて、女家族には大ウケだった。

そこで僕はハッとした。

もしかしたら、もしかしたらだが、この4歳児は最近の流行りが分かっていて、女の子を喜ばせるのに効果的な手を戦略的に使ったんじゃないかと思った。流行りというのは、あれだ、ベーコンレタス的なやつだ。

話が少し変わるが、ある同窓会で仲のいい旧友に会い、お互いの近況を聞きつつちょっかいを掛け合ってて楽しんでいた時だ。前に座ってそれを見ていた女の子がこう言ったのだ。

「ちょっと、私の前でイチャイチャしないでよ。あんたら付き合ってんの?」

BLには全く関心がなかった当時の僕は、男の友情を別の何かにはき違えているこの女友達の頭はどうかしてるんじゃないかと思った。実際腐っていたが。

「でも、そういうのいいよね…」

と、続けてしおらしく慈愛に満ちた顔で言うもんだから、僕はよくわからない気分になった。きっと、その子の目線の先は僕ではなく友人の方に向いていたのだと思うが、最近はこういうのが女の子にウケるのか、と思ってしまった。以来女の子がいる前ではいつもより2割増しで男とじゃれ合うようにしているのだが、何故かホモ呼ばわりされるようになったのはまた別の話だ。

とにかく、僕がとあるエピソードから得た人生の教訓ともいえるモテるための必勝法、BLっぽい絡みをこの4歳児は使ってのけたのだと思い、愕然とした。同時に、隣に座ってアナ雪に夢中になっている彼の将来性について大きな期待を持った。

彼はモテる。

僕より、はるかに。

将来有望な次男が僕を「お姫様」と呼ぶことはなかったが、女家族には数日の間「お姫様」と呼ばれた。僕は嘲笑の対象となり、次男は株が上がっているような気がした。そこまで予想していたというなら、この甥っ子は相当のやり手であると思った。

いや、ないか。